「ぱらりこさん」開発者インタビュー
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大学卒業後、新卒で当時の債務整理分野で最大手だった法律事務所に入所しました。そこから2つの法律事務所を経て、2024年11月に現在のネクスパート法律事務所へ入所し、経営戦略部でAI推進や数値管理などを担当しています。振り返ってみると、キャリアのほとんど、20年以上にわたって法的整理業務の最前線に携わってきましたね。
前職でもAIを活用した自己破産の自動化プロジェクトの現場責任者を務めていたのですが、ここ数年のAI技術の飛躍的な進化により、「これならいける」と確信しました。
開発から検証のフェーズは本当に苦労の連続でしたね。それでも、AI自体の進歩と、私自身がプロンプトエンジニアリングの試行錯誤を重ね、さらに弁護士陣と検証を繰り返したことで、ついに製品化できるレベルまで精度を向上させることができました。20年越しの悲願だった自動化が実現したときは、深い感慨を覚えました。
おっしゃる通りです。「ぱらりこさん」の心臓部とも言えるAIのプロンプト(指示文)は私がメインで考案したのですが、これまで全国の裁判所で、おそらくトータル2500件以上の自己破産申立書の作成に携わった経験があってこそと思います。「裁判所が何を求めているのか」「どこを見逃してはいけないのか」という現場の知見は誰よりも蓄積しているつもりです。
ただ、私一人の経験に頼るのではなく、できあがったプロンプトや出力結果については、最終的にネクスパート法律事務所の所属弁護士たちが実務的・法的な観点から厳密なチェックと監修を行っています。長年の現場経験と、現役弁護士による確かなリーガルチェックが両輪となって初めて、実務に耐えうる精度を実現できたと考えています。
そうですね、最初に入所した法律事務所は、当時の業界最大手で毎月数百件単位の申立てを処理していました。終電近くまで働くのが当たり前で、休日出勤もしょっちゅうでした。それでも申立書の作成は、一件一件、担当者が手で入力して確認する、という作業が基本でした。
申立書には、財産目録、陳述書、家計表、債権者一覧表など多岐にわたる書類が必要で、それぞれに大量のデータ入力と転記作業が伴います。当時は1件あたり、事務担当者が書類作成だけで数時間を費やすことも珍しくありませんでした。
当時もRPA(ロボットによるプロセス自動化)などの技術は存在していましたが、自己破産の書類作成には高度な判断が必要な箇所が多く、単純な自動化ではどうしても限界がありました。たとえば、依頼者の収支状況から「どの資産を計上すべきか」「どの支出を家計表に反映すべきか」と考えることは、法律の知識と実務経験の両方が必要なんです。
また、全国の裁判所によって申立書の書式や細かい記載要件が異なるという問題もありました。この書式の多様性が、システム化・自動化を阻む大きな壁でした。AIの登場によって、この「判断」と「柔軟な対応」の部分が、ようやく実現の射程に入ってきたのです。
「AIの登場によって、20年間越えられなかった壁が、ようやく射程に入ってきた。」
新居 大輔 /「ぱらりこさん」開発責任者現在は、自己破産申立てに必要な書類のうち、主要なものをAIで自動作成できます。具体的には、債権者一覧表、資産目録、至った事情(陳述書)、家計表・収支表などです。依頼者から聞き取ったデータや提供された書類をAIに入力するだけで、かなり精度が高いドラフトが自動生成されます。
また、申立時の必須の帳票ではないのですが、入出金履歴のデータから不審な出金や浪費のパターンを自動で検出し、チェックすべきポイントを洗い出す機能も備えています。これまで弁護士が目視で確認していた作業を、AIが担うことで、確認漏れのリスクを大幅に低減できます。
「ぱらりこさん」のプロンプトは、私の2500件以上の申立書作成経験と、そこから得た「裁判所が何を求めるか」という知見を徹底的に落とし込んで設計しています。さらに、完成したプロンプトの検証・監修は、ネクスパート法律事務所の現役弁護士チームが担当しており、法的に問題のある出力が出ないよう、複数のフェーズでチェックを行っています。
もちろん、AIが生成した書類は必ず担当弁護士が最終確認を行う運用を前提としています。ぱらりこさんは「書類を自動完成させるツール」ではなく、「経験豊富なアシスタントとして下書きを作り、専門家の確認を補助するツール」というポジションです。
これは最も慎重に設計した部分です。法律事務所が扱う情報は、依頼者の財産状況や借金の詳細など、非常にセンシティブな個人情報ばかりです。「ぱらりこさん」では、AIの推論処理とデータ保管を完全に分離し、AIが長期ストレージにアクセスする経路を設計段階から排除しています。
また、利用するAIサービスについては、入力データがAIの学習に使用されない契約を締結しています。「便利だから使う」ではなく、「法律事務所が安心して使えるか」を最優先に、セキュリティアーキテクチャを構築しました。
これは正直、大きな課題だと認識しています。「AIは難しそう」「ミスが怖い」という不安は、現場の方々から実際によく聞きます。だからこそ、操作画面はできる限りシンプルに設計し、「入力する→AIが書類を作る→担当者が確認する」というフローを、誰でも迷わず使えるように整えました。
また、導入後のサポート体制も重視しています。ツールを導入して終わりではなく、現場で実際に使いながら出てきた疑問や問題点に、継続的に対応していく体制を整えています。
私は、AIによって法律事務所の「仕事の質」が根本的に変わると考えています。これまでは、弁護士やスタッフの時間の多くが、書類作成や転記作業といった「処理業務」に費やされていました。AIがこの部分を担うことで、弁護士や事務スタッフが「考える仕事」「依頼者と向き合う仕事」に集中できるようになります。
以前、私が担当した依頼者の方から、手続きが終わった後に「おかげで人生が変わりました」と連絡をいただいたことがあります。AIには絶対にできない、人間だからこそ生まれる信頼関係がある。そういった時間を、もっと大切にしてほしいと願っています。
実は、これまで全国の裁判所ごとにバラバラだった自己破産の書式が、2028年に完全統一される予定です。私は、この「書式がバラバラだったこと」こそが、法的整理分野のDXが他分野より遅れた最大の原因だと考えています。書式が統一されれば、自己破産・個人再生・法人破産のDXは一気に加速します。私たちも統一書式を「ぱらりこさん」に実装し、全国の法律事務所をサポートしていくつもりです。
そして何より、AIで業務を効率化することで、弁護士には「依頼者と直に接すること」に時間を使ってほしいと強く願っています。人間である弁護士にしかできないことに注力してもらう。そのための「ぱらりこさん」でありたいですね。
「ぱらりこさん」は、単なる業務効率化ツールではありません。法律事務所が依頼者により深く寄り添うための、時間と余裕を生み出すためのシステムです。
私たちは、AIを「人間の代替」ではなく「人間の能力を拡張するもの」として活用する立場を明確にしています。弁護士と事務スタッフが、より本質的な業務に集中できる環境を整えること——それが「ぱらりこさん」を世に出した、私たちの願いです。
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